中耳炎について

中耳炎の種類

【急性中耳炎】

中耳に起こる急性炎症である。ほとんどは風邪に続発する。
ウイルス性の急性中耳炎もあるが、多くはウイルス感染後に鼻咽腔(鼻の奥の部分)から耳管(鼻の奥と中耳を連絡している管)経由で細菌感染が成立し化膿性中耳炎が発症すると考えられている

【慢性中耳炎】

大きく分けて下記の二つの病態がある。
通常炎症症状は軽く、細菌感染で急激に悪化したとき以外は耳は痛くならない。

【1】慢性穿孔性中耳炎

急性中耳炎がうまく治癒せず、鼓膜に穴が残り、耳漏(みみだれ)が持続したり耳漏を繰り返す状態である。
手術により鼓膜の穴を閉鎖することが望ましい。細菌感染で急激に悪化し、耳漏の急増、耳の痛み等が生じたときには抗菌薬の投与などの適切な治療を要する。

【2】真珠腫性中耳炎

慢性炎症により中耳の換気障害が起こり、中耳に陰圧が生じて鼓膜上皮が中耳腔に内嵌し、そこに落屑表皮が集積することにより真珠腫が形成される。
真珠腫は徐々に周囲の骨を破壊しつつ増大する。
外来処置で集積する落屑表皮を定期的に除去できれば保存的に経過を見ることもできるが、多くは進行性で手術治療を要する。真珠腫の拡大は重篤な合併症の原因となる。

【滲出性中耳炎】

長期間にわたり中耳腔に滲出液が貯留して耳閉感(耳がつまった感じ)や耳の聞こえが悪くなる病気である。

耳の痛みや耳漏などの急性炎症症状はなく抗菌薬の投与は必要でない。
小児と高齢者に多い。小児では急性中耳炎に続発することが多く、高齢者ではかぜなどによる耳管閉塞が原因となる。
小児ではアデノイドの肥大や副鼻腔炎が原因となることがあり、その場合にはこれらの治療が必要になる。耳管通気や薬物療法などの保存的治療で治らなければ、鼓膜の切開や鼓膜に換気チューブをはめる小手術が必要となる。


早急に治療が必要な中耳炎

【急性中耳炎】

症 状

小児で風邪を引いた後に耳痛で発症することが多い。成人でもみられるが圧倒的に小児に多い。
耳閉感や軽い難聴を伴う。発熱は炎症の程度により様々である。鼓膜に穿孔ができると耳漏を生じる。

診 断

小児で風邪の症状に引き続き耳痛が発生すれば可能性が高い。乳幼児では急な不機嫌、熱発でも発症する。診断は鼓膜の観察により発赤、膨隆、耳漏の流出を確認すれば確定する。

治 療

初期治療としては抗菌薬と消炎鎮痛剤の投与で十分なことが多い。
熱が高く耳痛の強い重症例で、鼓膜の穿孔がなければ鼓膜切開が必要になる。
起炎菌は肺炎球菌、インフルエンザ菌、カタラーリス菌が多い。近年の起炎菌の耐性化が顕著である。特に肺炎球菌ではペニシリン耐性肺炎球菌(PISP、PRSP)が約 60%、インフルエンザ菌ではβ-ラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性菌(BLNAR)約50%である。セフェム系抗菌薬の乱用が耐性化を招いた反省から、経口薬ではペニシリンが推奨される。
耐性菌検出のリスクファクターとして
(1)低年齢(2歳以下)、
(2)集団保育、
(3)急性中耳炎反復の既往、
(4)1ヶ月以内の抗菌薬による前治療、
があげられており、このような場合にはペニシリンの増量投与が勧められる

【慢性中耳炎急性増悪】

症 状

急性中耳炎とは逆に小児では少なく成人に多い。
慢性中耳炎の経過中に突然多量の耳漏がでる。炎症症状が強いと耳痛を伴う。

診 断

鼓膜の視診で穿孔と流出する耳漏を認めれば確定する。
真珠腫性中耳炎の急性増悪では鼓膜の弛緩部や後上方に陥凹形成を認め、同部位より耳漏と真珠腫塊を認める。

治 療

耳漏の吸引除去、外耳道鼓室洗浄等により分泌物を除去する。
点耳液による外用抗菌薬の投与が有効である。
しばしば耳漏からMRSA(多剤耐性のブドウ球菌)が検出されるが、外耳道皮膚からの混入のことが多く起炎菌とは限らない。
洗浄などの局所処置により対処し、安易にMRSAに対する抗菌化学療法は行わないことが重要である。


中耳炎の合併症

【顔面神経麻痺】

急性中耳炎の合併症として顔面神経麻痺が起こることがある。
鼓膜穿孔がない場合には早急に鼓膜切開を行い、抗菌薬の点滴静注を行う。
耳痛に顔面神経麻痺を伴うときにはハント症候群との鑑別が必要であり耳介、外耳道、鼓膜をよく観察する。

通常ハント症候群では鼓膜は正常で、耳介あるは外耳道に小水疱を伴う発赤をみる。
慢性中耳炎に顔面神経麻痺を伴うときには真珠腫による顔面神経圧迫か結核性の中耳炎を疑う。

【内耳炎】

中耳炎の経過中に、めまいやふらつきが出現したら、炎症が内耳に波及した可能性がある。
真珠腫性中耳炎で多く、真珠腫による骨破壊が内耳に達すると起こる。

院長 羽柴 基之(耳鼻咽喉科担当)